海外の電力自由化から学ぶ ~イタリア・フランス・ドイツ、欧州の現状~
海外の電力自由化から学ぶ~アメリカの成功例と失敗例~では、1990年代に電力自由化に踏み切ったアメリカの事例をご紹介しました。同様にヨーロッパでも1990年代後半から電力の自由化が始まりました。そこで今回はイタリア・フランス・ドイツを題材にヨーロッパの電力自由化についてご紹介したいと思います。
利用者の選びやすさを重視して成功を収めたイギリス
ヨーロッパの中でも比較的早い段階で電力の自由化に踏み切ったイギリス。1990年に国営電力会社を民営化し、3社の発電会社と1社の送電会社に分割しました。さらに各地区の配電局も民営化し、1999年には家庭向けの小売も全面自由化しました。
当初はさまざまな問題もありましたが、2002年に新電力取引制度(NETA)を取り決め、2005年には電力市場の活性化を狙いBETTAという電力取引制度が成立。その結果、外資企業を含む新規参入があり、企業間買収やグループ化により、現在ではBIG6と呼ばれる6大グループが電力小売市場の9割、発電市場の7割のシェアを占めています。
イギリスの場合、電力自由化以前にガス市場も自由化されていたので、電力とガスの販売をセットにしているケースが多くなっています。また料金プランが多様化して消費者が選びにくいという状況を打開するために、電力比較サイトが発達していることも特徴でしょう。日本でも通信会社やガス会社などがセット割引などを実施しているので、見習う部分も非常に多くなっています。
1万種類を超える料金プランが壁になったドイツ
イギリスと同様、1998年と早くから電力事業の全面自由化をしたドイツ。しかし、イギリスのようにうまくはいきませんでした。その理由が電力会社の多さと料金体系の複雑さです。現在、ドイツには1100もの電力会社が乱立し、料金プランは1万種類を超えるそうです。そのような状況では、どの電力会社や料金プランを選べばよいのか、消費者は困ってしまいます。
さらにドイツの新電力会社の中には、1年分の料金前払いやデポジットを要求するケースもあり、さらに倒産によって損害を受けるケースも目立ちます。そのため消費者からの信頼感を失っているというのが現状。その中でもメインになっているのがシュタットベルケと呼ばれる地域ごとの電力会社です。電力料金が安いわけではないシュタットベルケが生き残った理由は、地域に密着した身近な存在であり、ニーズに合ったサービス、そして安心感なると言えるでしょう。
1社独占から抜け出せず、電力自由化で変化がなかったフランス
2007年に電力の完全自由化に踏み切ったフランスですが、あまり普及していないのが現状です。その理由は、それまで電力の販売を独占していた旧国営企業のEDFの存在。電力の全面自由化後も政府が深く関与し、未だに8割はEDFから電力供給を受けている状態です。
フランスの場合は、長期間に渡って電力の1社独占状態だったため、電力事業のノウハウを持った競合がいないということも新規参入業者が伸び悩んでいる理由でしょう。フランスの電力は原子力発電に8割を頼っており、その発電施設はEDFのものになります。そこで反原発などの風潮が高まれば、風力発電や太陽光発電などのエコエネルギーにシフトする消費者も増えるのかもしれません。しかし、現状では電力自由化による変化はあまりないという状況です。
同じEU諸国でも電力自由化の状況は異なる
ご紹介したイタリア・フランス・ドイツのほか、同じEU諸国であっても電力自由化の状況はさまざま。政府の規制緩和などによって電力自由化が進んだイギリス、電力会社が乱立しすぎたため苦境に立たされているドイツ、電力自由化による変化が少なかったフランス、そのほかのヨーロッパの国々も状況は異なります。
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